島回神経膠腫は、許容可能な神経学的後遺症で摘出可能であるが、高次の神経認知機能の損傷に関してほとんど分かっていない。最近まで神経膠腫の神経認知機能について正しく評価されていなかった。著者らは島回神経膠腫とその近傍の腫瘍を対象として調べた。
方法:
33症例のWHO grade II-III島回神経膠腫の切除前後に神経心理学的評価を行った(TABLE 2)。神経認知機能の評価を島回神経膠腫とそれ以外の部位と比較するために、対照群を年齢(5歳以内)、教育レベル(12年以下、12-16年、16年以上)、KPS(10以下)、腫瘍部位、悪性度、サイズを揃えた(TABLE 1)。 対照群は島回周囲の腫瘍とした(Fig.1)。
結果:
術前の神経認知機能の低下は島回・対照群の両方において認められる(Fig.2)。島回神経膠腫の患者は術前は特に呼称テストの低下を認めた。両群で術後の神経認知学的機能低下を認めた(Fig.3)。島回神経膠腫は術後に学習・記憶が低下傾向にある。神経学的後遺症にてついては他の文献と遜色なかった。
結論:
島回の腫瘍は術後に学習や記憶の機能低下を呈する傾向にあるが、神経認知機能について統計学的な差は術前後において島回と対照群で観察されなかった。
技術的には挑戦ではあるが、多くの患者が神経学的、認知的後遺症を来すことなく、島回領域の神経膠腫の外科手術を遂行することは可能である。