アルドステロン症,急性糸球体腎炎,クロム親和性細胞腫,または子癇などにより血圧が急激に上昇したときにみられる症候群である.拡張期血圧は通常130mmHg以上である.頭全体または後頭下部の頭痛が亜急性に発生し,徐々に強くなり咳や腹圧を加えると憎悪し,とくに早朝時に強く嘔吐を伴うこともある.一過性失明,半盲,片麻痺,失語など局所神経症状,さらに全身性または局所性けいれんも普通にみられる.一定期間経つと意識障害(JCSの2桁から3桁の意識障害)が出現し,従来言われた3主徴(頭痛,けいれん,意識障害)が揃ってくる.発症時の血圧は拡張期血圧で120mmHg以上,平均で150-200mmHgが普通である.
本症の病態生理は,まず急激な血圧上昇により脳の小動脈の正常な代償性収縮が障害され,脳血流が増加する(自動調節障害).拡張した血管壁は虚血状態となり,徐々に透過性亢進し滲出液が出て局所性浮腫を形成する.経時的MRIで白質浮腫が証明される.この浮腫が進行するにつれ血管を圧迫し,局所血流を低下させる.この時期に症状が発現する.
本症の髄液所見は大多数で正常であるが,リンパ球を主とする.細胞増多症,高蛋白の報告もある.CTでは白質全般に対称性低吸収域をみる.症状の寛解とともに低吸収域が消失するので浮腫であろう.MRIでは,T2強調画像で白質,灰白質に局所的または対称的高信号域をみる.特に後頭葉に強く,4~5週後には消失する.perufusion imagingでも障害がみられる.(Jonesら,1997).
本症は,一般に一過性であるが,ときに再発を繰り返すこともある.予後は最初の血圧と発症から治療までの期間が重要で,完治,後遺症,時に死亡する例もある.脳出血,脳梗塞,脳腫瘍などの鑑別はCTを参考にすれば困難ではない.