パーキンソン病について
日本では、人口10万当たり100~150名のパーキンソン病患者さんがおられます。発症年齢のピークは、50歳台後半から60歳台にあります。発生頻度は男女同数です。
パーキンソン病は脳の中の黒質という部分の神経細胞の数が減ることが原因です。ここの神経細胞は、ドパミンという神経伝達物質を産生し、突起を線条体という部分に送っているので、線条体のドパミンが減少します。これが色々な症状の原因と考えられています。黒質の細胞が何故減るのかはまだよくわかっていません。
パーキンソン病の四大症状は(1)安静時のふるえ、(2)筋強剛(筋固縮)、(3)動作緩慢、(4)姿勢反射障害です。このほか(5)同時に二つの動作をする能力が低下し、(6)自由な速さのリズムが作れなくなります。
パーキンソン病に特徴的なのは力を抜いてリラックスしたときのふるえです。ただし力を入れたときにふるえることもあります。筋強剛とは関節を曲げ伸ばしするときに強い抵抗を感じることです。このため動作がぎこちなくなります。パーキンソン病では動作が遅いのみならず、動きそのものが少なくなります。患者さんはまばたきが少なく、表情ひとつ変えず、寝返りもしません。動けば遅く、スローモーションを見ているようです。姿勢反射とは体が傾いたときに足を出して姿勢を立て直すことです。これが障害されると転びやすくなります。同時に二つの動作をする能力が低下すると、お盆にのせたお茶をこぼさないよう気を配ると足が出なくなり、クラッチを踏みながらギア操作をするマニュアル車の運転が難しくなります。
パーキンソン病は左右どちらか片側から発症します。2~3年すると反対側にも症状が現れますが、長年経過しても左右差を認めるのが普通です。初発症状はふるえが最も多く、次いで動作のぎこちなさが多いのですが、痛みで発症することもあります。
L-dopa(レボドパ)
最も強力なパーキンソン病治療薬です。1970年代のこの薬の登場はパーキンソン病の治療に画期的な進歩をもたらしました。それまで発症後5年で寝たきりだったのが、 10年経っても歩けるようになりました。ところがL-dopaの服薬期間が長くなると、さまざまな問題が起こります。最大の問題は薬効の変動です。L-dopaは作用時間が短いため、内服すると急に動けるようになりますが、2時間もすると効果が切れて急に動けなくなります。効果が切れるのを恐れてL-dopaを過剰に服薬すると、今度は身体が勝手に動くL-dopa誘発性の不随意運動(ジスキネジア)が出現します。1980年以降わが国では末梢性ドーパ脱炭酸酵素阻害薬との合剤が一般的です。
近年、新薬やDBSなど新しい治療法の開発により、パーキンソン病の予後は著しく改善し、生命予後に関しては、ほぼ天寿を全うできるようになりました。薬を服用しながら就業しているひともたくさん居ます。しかし、少しずつ症状が進んでいく場合も少なくありません。薬に対する反応は患者さんごとに異なりますし、副作用のために十分な薬が服薬できないこともあります。パーキンソン病自体は命にかかわる病気ではありません。