一次性咳嗽頭痛

■以前に使用された用語
 良性咳嗽性頭痛(benign cough headache),
 ヴァルサルヴァ手技頭痛(Valsalva-manoeuvre headache)
■解説
 頭蓋内疾患が存在しない状態で,長時間の身体的な運動ではなく,咳またはほかのヴァルサルヴァ(いきみ)手技(Valsalva manoeuvre)により誘発される頭痛。
■診断基準
A.B〜D を満たす頭痛が2 回以上ある
B.咳,いきみ,またはその他のヴァルサルヴァ
手技(あるいはこれらの組み合わせ)に伴って
のみ誘発されて起こる
C.突発性に起こる
D.1 秒〜2 時間持続する
E.ほかに最適なICHD-3 の診断がない
■コメント
 4.1「一次性咳嗽性頭痛」は,神経内科の外来を受診するすべての頭痛患者の1%,あるいはそれより少ないまれな状態である。しかし,胸部疾患を扱う外来で診察を受けた咳嗽患者の1/5 が,咳嗽性頭痛であったことが報告されている。
 4.1「一次性咳嗽性頭痛」は咳嗽のあとに発現し,ほぼ直後にピークに達し,数秒〜数分の間で消退する(しかし,軽度〜中等度の頭痛が2 時間みられる患者がいる)。通常,頭痛は両側性で後頭部の痛みであり,主に40 歳以上の年齢でみられることが多い。咳嗽の頻度と頭痛の重症度の間に有意な相関がある。めまい,悪心および睡眠異常といった随伴症状は,4.1「一次性咳嗽性頭痛」の患者の2/3 に及ぶことが報告されている。
 4.1「一次性咳嗽性頭痛」の治療には通常インドメタシン(50〜200 mg/日)が有効であるが,少数の症候性の症例でも,この治療に効果を示すことが報告されている。
 症候群としての咳嗽性頭痛は,約40%が症候性で大半がアルノルド・キアリ奇形Ⅰ 型(Arnold-Chiari malformation type I)である。その他,脳脊髄液圧低下,頸動脈あるいは椎骨脳底動脈疾患,中・後頭蓋窩の腫瘍,中脳嚢胞,頭蓋底陥入症,扁平頭蓋,硬膜下血腫,脳動脈瘤および可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)が原因となることが報告されている。神経画像検査は,頭蓋内の病変または異常を検索するにあたり重要な役割を果たす。テント下の腫瘍は,小児において頭蓋内占拠病変の50%以上を占めることから,小児の咳嗽性頭痛は,原因疾患がないことが証明されるまでは症候性であることを考える。

■4.1.1 一次性咳嗽性頭痛の疑い
診断基準
A.以下のいずれかを認める
1. B〜D を満たす1 回の頭痛
2. B およびC とD のいずれかを満たす頭痛が2 回以上ある
B.咳,いきみ,またはその他のヴァルサルヴァ手技(あるいはこれらの組み合わせ)に伴ってのみ誘発されて起こる
C.突発性に起こる
D.1 秒〜2 時間持続する
E.他のいかなるICHD-3 の頭痛性疾患の診断基準も満たさない
F.ほかに最適なICHD-3 の診断がない

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